JavaOne 2000 レポート - 組み込み分野から見た Java -


  1. はじめに
  2. Java 2 Platform, Micro Edition は今年羽ばたく
  3. パビリオンで見た J2ME
  4. カンファレンスにて
  5. CLDC と KVM
  6. Real-Time Java
  7. JIM: Web-based Industrial Monitoring Framework
  8. おわりに

 
  はじめに  
 

Java に関する世界的なイベントは年 2 回、6 月と 12 月に行われます。6 月が San Francisco で開催される Developers Conference の JavaOne、一方の 12 月は Ney York で行われる Java Business Conference です。この中で JavaOne は世界各国の開発者が一同に集まる Java の祭典です。今年も 6 月 6 日から 4 日間行われる JavaOne に、私たち Java コンソーシアム工業応用部会の有志が参加してきました。そこで、JavaOne における産業向けの話題についてリポートしたいと思います。

また、工業応用部会で標準化作業を行っている JIM について BOF (Birds of Fether) セッションで発表を行いましたので、その様子も合わせてリポートします。このレポートを読まれる皆さんの興味は組み込み分野であると思いますので、組み込みに関連したものを中心にリポートしていきます。また、通常はなかなかマスメディアなどには取り上げられないカンファレンスの様子なども取り上げていきます。

 
  Java 2 Platform, Micro Edition は今年羽ばたく  
 

Java 2 Platform には 3 種類あり、それぞれエンタープライズ向けの Java 2 Enterprise Edition (J2EE)、デスクトップクライアント向けの Java 2 Standard Edtion (J2SE)、組み込み向けの Java 2 Micro Edtion (J2ME) にわかれます。今まで、Java といえば Web Server を中心とした ASP などへの応用として J2EE が注目されていました。

しかし、今年の JavaOne ではちょっと感じが違うようです。もちろん、相変わらず J2EE の注目度は高いのですが、それだけでなく J2ME が大きく取りあげられていたのです。初日のキーノートセッションで司会の John Gage 氏が Sony の MD Discam を持って登場したのです。MD Discam は Java を搭載したビデオカメラで、GUI などの部分が Java で書かれています。これ以外にもキーノートの中で Java が動作する携帯電話や PDE などのデモなどが行われました。

今年は NTT Docomo の iMode で Java が動作するようになるなど、実際に製品の中に搭載される例がどんどん出てくるのではないでしょうか。

2 日目のキーノートでも J2ME は大きく取り上げられました。Java の生みの親である James Gosling 氏が aJile Systems のロボットのデモを紹介しました。このシステムは Java chip を使用し、real-time 処理が行えるようになっています。実際にフィールドでこのような機器が使われるのはまだ先かもしれませんが、その時期はもうすぐそこに来ているかもしれないという予感を感じさせるものでした。

 

 
  パビリオンで見た J2ME  
 

JavaOne はカンファレンスと展示が同時に行われています。展示会場は Java Pavillion と呼ばれています。広さはそれほどでもないのですが、所せましとさまざまな企業が展示を行っています。この中で組み込み関連で目についたものを紹介していきましょう。

組み込み用 Java Virtual Machine

今年はいろいろな組み込み用 JVM が展示されていました。

esmertec は Jbed を展示してます。Jbed は RT-OS と一体化させて使用することも可能で、さまざまな使用形態を選ぶことが可能です。また、インクリメンタル GC を利用したノンブロッキングガベージコレクションが可能であるためリアルタイム処理に関しても適しているそうです。ブースではビリヤードの玉を磁石を用いて浮遊させるデモを行っていました。

INSIGNIA は Windows CE が動作する Pocket PC で JEODE のデモを行っていました。JEODE もライブラリの選択などを行うことが可能で、使用形態によりフットプリントを最小化することができます。また、GC に関しても Concurrent GC を利用してプリエンプティブを実現しています。

esmertec
http://www.esmertec.com/

INSIGNIA
http://www.insignia.com/

Jbed JEODE
Jbed のデモ風景。磁石をコントロールしてボールを浮遊させている Pocket PC 上で JEODE を使用して、四角形のアニメーションを行う

その他にも、HP や Access などで JavaVM の展示が行われていました。HP の JVM Chai は日立のフィールドサーバなどで採用されています。同社のブースでは Jornada 上での動作デモを行っていましたが、去年までの産業向け組み込みという面は薄れていたようです。Access は Sun の互換性テストにパスした JV-Lite2 を発表しました。ブースでは Dreamcast が展示されており、Dreamcast 上で Java が動作することを示していました。Dreamcast には同社の組み込み機器向けブラウザ NetFront が動作しており、JV-Lite は NetFront のプラグインモジュールとして動作しています。

Hewlett Packard
http://www.hp.com/

Chai の Web Site
http://www.internetsolutions.enterprise.hp.com/chai/index.html

Access
http://www.access.co.jp/top.html

JV-Lite2 のプレスリリース
http://www.access.co.jp/news/topics/000607.html

本家である Sun も KVM や Personal Java に関して展示を行っています。また、組み込み環境で使用する Web Server の Java Embedded Server を用いた電力監視のデモも行われていました。

展示は行わなかったものの目立っていたのが Applix の JBlend です。John Gage が持っていた Sony MD Discam も JBlend が採用されています。その他にもいくつか JBlend を採用した機器が展示されていました。Applix は 2 年前の JavaOne の時にロボットのデモを行っていましたが、この時に種を蒔いていたものが今年になって花を咲かせたようです。

Applix
http://www.aplix.co.jp/

JBlend の Web Site
http://www.jblend.com/

Java 搭載機器

Java を搭載した機器も携帯電話を中心にして展示されていました。携帯電話や双方向ポケベル、PDE などのアプライアンスには Java が動いて当たり前という様相を呈してきました。

その中でも大きく取り上げられていたのが Motorola です。Motorola の CEO である Galvin 氏はキーノートスピーチの中で 2002 年までに Motorola のすべての携帯機器に Java を搭載するとぶち上げました。パビリオンにおいても JavaCard を使用することが可能な高機能携帯電話や双方向ポケベルなどが展示されいます。また、Sega との携帯電話向けのゲームを共同開発することを発表し、実際に動作する Sonic the Hedgehog が展示されていた。このゲームは実際に遊ぶことが可能でだそうです。

Motorola
http://www.motorola.com/

Sega と Motorola の共同開発のプレスリリース
http://mot-sps.com/news_center/press_releases/PR000605E.html

Motorola Cellular Motorola Cellular 2
JavaCard が使用できる携帯電話。 携帯電話で動作する Sonic the Hedgehog。上からの視点のため分かりにくいが、画面中央にソニックがいる

パビリオンでは携帯電話などのアプライアンスが展示の中心になっていましたが、産業向けの機器の展示も数こそ少なかったのですが、行われていました。日立はビル管理用のフィールドサーバに前述したように Chai を搭載しています。このフィールドサーバは CPU に SH-3 を使用し、iTron 上で Chai が動作しています。温度の管理や入室者の管理を行うことができ、IC カードを用いた入室者の認証のデモを行っていました。

日立はもうひとつブースを構えており、こちらは SH-4 を使用した Java の評価用ボードの展示を行っています。こちらの Java はフィールドサーバのものとはことなり Sun の Personal Java をポーティングしたものになっています。

日立
http://www.hitachi.co.jp/

富士通は picoJava-II という JavaChip を展示しています。picoJava-II は Sun がデザインを行っており、富士通はこれをライセンス生産しています。ブースでは picoJava-II を使用した評価用ボードの展示を行っていました。

富士通
http://www.fujitsu.co.jp/

picoJava-II チップに関するプレスリリース
http://www.fujitsu.co.jp/jp/news/2000/04/5.html


Hitachi Field Server Fujitsu picoJava-II
ビル管理のデモ。温度などの管理や入室者の管理を行うことができる 富士通製 picoJava-II チップ

Cyberonix は工場をイメージしたブースで、中央のロボットがジェリービーンを作っていく様子をデモしていました。ロボットやベルトコンベアは三菱製の PLC に接続されており、これを Java からコントロールするようになっています。ここでのデモのように実際の PLC を Java でラップしたものを Cyberonix は Virtual PLC と呼んでいるようです。

Cyberonix
http://www.cyberonix.net/

Cybronix Jelly Bean Factory
Cyberonix のデモ。中央のロボットがジェリービーンを集めて画面右手のろうとの中に入れていく。奥に見える赤いボックスが三菱製 PLC

Real-Time Java

産業分野ではリアルタイム処理は避けてとおれないものですが、Java でこれを行うことは問題が多くありました。Java の標準化を行う JCP ではこの問題に対しても議論を行ってきました。JCP-1 で議論されている Real-Time Java Extension は IBM の Greg Bollella 氏や Sun の James Gosling 氏が加わっています。今年の JavaOne では JCP での成果をデモしています。aJile Systems がインプリした Real-Time Java のシステムはロボットが 2 台でキーボードを演奏するというデモを行っていました。2 台のロボットはそれぞれ異なるボードでコントロールされています。ボードには aJile Systems が開発した JavaChip が使われています。ボードはイーサネットで接続されており、2 台のロボットが同期して演奏できるようになっていました。

aJile Systems
http://www.ajile.com/

aJile Real-time Demonstration
Real-Time Java によるキーボードの演奏。ロボットはそれぞれ JavaChip を使用したボードで制御されている aJile Systems の JavaChip を使用した評価用ボード

 
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